Decentralizaiton(分散化)はCrypto / Web3、Blockchainの世界で最もよく使われる言葉の一つです。最も使われているにもかかわらず、その定義が曖昧な概念です。
実際、分散化は多大なコストと犠牲を払って実現されています。ブロックを検証する役割であるマイナー、バリデーターは、日々のブロックを検証し、多大なコストをかけています。
私(ikuma)が、Crytpo / Web3に惹きつけられたのは「分散化」による「個のエンパワーメント」でした。
分散化により成り立っているブロックチェーンというテクノロジーにより、Facebookのような一つの企業、政府にコントロールされるのではなく、参加者同士で協働することでネットワーク・エコシステムを創っていくことができます。一つの企業や特定の権力者がいません。この仕組みでもっと効率的で、公平な仕組みができる可能性があります。
この記事では、ます、Crypto / Web3の根幹とも言える「分散化」とは何か、なぜ重要なのかについて、識者の意見を紹介していきます。そして、分散化との向き合い方についての考えを共有します。この記事が開発者、Web3のプロジェクト、企業が分散化を考える際のヒントになればと思います。
TL;DR
- 分散化は、ブロックチェーンのテクノロジーを支える重要な概念である。
- 多様な切り口、レイヤーで分散化は存在する。
- 技術、経済、政治という大きな切り口から、ノードクライアント、新機能のデプロイの方法などの細かい点まで、分散化が存在する。
- 分散化 vs 中央集権化という二項対立ではなく、分散化 vs 中央集権化のグラデーションがあると理解したほうがよい。
- 分散化は、Web3の重要な原則を確立する上で重要である。
- あらゆる面での分散化が保たれることで、Credible Neutrality(個人、グループを差別・優遇せず、Permissionlessに誰もが使うことができる)、Composability(レゴブロックのようにソフトウェアのコンポーネントを組み合わせる)、Trustless(第三者を信頼することなく、経済的なメカニズムとインセンティブで運営できる)、などのWeb3の重要な原則を確立することができる。
- この重要な原則が確立されているWeb3プロトコルでは、これまでのWeb2や既存の仕組みとは異なる競争の促進、自由の保護、ステークホルダーへの報酬といったパラダイムシフトが起きている。
- 分散化との向き合い方
- Crypto / Web3の本質は「分散化」にある。プロジェクトや事業を進める際には、この分散化の原理を保持することが不可欠。なぜなら、分散化を実現しない限り、Crypto / Web3の革新的な特性やパラダイムシフトを活用することはできないから。
分散化とは何か
分散化とはなにかを整理していきたいと思います。
辞書の分散化の意味は、「一箇所に集中していない状態にすること、適度にばらつきのある状態にすること」とあります。
3つのタイプの分散化
Vitalik Buterinは、2017年2月6日のブログ「The Meaning of Decentralization」で分散化の定義をソフトウェアの観点から3つに分けて定義しています。
出典: The Meaning of Decentralization
3つの軸で分散化について説明しています。現実世界の例をこの3つの軸を当てはめて、説明もしています。
- 企業:伝統的な企業は、政治的に中央集権的であり(CEOは一人)、建築的に中央集権的であり(本社は一つ)、論理的に中央集権的である(実際には半分に分けることはできない)。
- 民法:中央集権的な法律制定機関に依存しているのに対し、コモン・ローは多くの裁判官個人によって作られた判例によって成り立っている。それにもかかわらず大きな裁量権を持つ裁判所が多数存在するため、民法にはまだ建築的な分権が残っているが、コモン・ローにはそれがより多く存在する。どちらも論理的には中央集権的である(「法は法である」)。
- 英語:アリスとボブの間で話されている英語と、チャーリーとデイビッドの間で話されている英語が一致する必要はまったくない。言語が存在するために必要な中央集権的なインフラは存在せず、英語の文法のルールも、誰か一人の人間によって作られたり、管理されたりすることはない(一方、エスペラントはもともとルートヴィヒ・ザメンホフによって発明されたが、現在では権威を持たずに段階的に進化する生きた言語のように機能している)。
- BitTorrent:英語と同様に論理的に分散化されている。コンテンツ・デリバリー・ネットワークも同様だが、1つの企業によってコントロールされている。
そして、肝心のブロックチェーンは下記のように整理しています。
- ブロックチェーンにあてはめてみると、政治的には非中央集権的(誰にもコントロールされない)であり、アーキテクチャ的にも非中央集権的(インフラの中央障害点がない)ですが、論理的には中央集権的です(共通に合意された状態が1つあり、システムは1つのコンピュータのように動作します)。
a16zの分散化の定義
a16zは、2023年5月31日のブログ「Factors of decentralization of web3 protocols: Tools for planning greater decentralization」で分散化の定義について説明しています。
この記事は米国の規制動向を意識した内容です。具体的には、Web3プロトコルをブロックチェーンとスマートコントラクトにわけて、Web3プロトコルの分散化を正確に評価し、比較することを目的として、分散化の定義、ニュアンスを明らかにすることでした。
彼らも分散化には3つのタイプがあると述べています。
この3つの観点に加えて、下記の要素ごとに分散化の度合いを定義した表を発表しています。今後のプロトコルの分散化の度合いを測る点で非常に参考になりそうです。
Web3プロトコルの本当に細かい点の分散化まで網羅されています。一部を抜粋すると、ノードのクライアントの分散化、開発主体の分散化、投票権限の分散化、市場での流通トークン数まで、それぞれの要素におけるCentralized, Partially decentralized, Siginificantly decentralized, Decentralizedの4つの段階の状態を定義しています。
カテゴリー | 要素 | 内容 |
Computation | - Block Creator Concentration
- Node Diversity
- Client Diversity
- Diversity of Data Availability
- Layer2 integration | - ブロック生成者、ノード、ノードのクライアントの分散化度合い
- DAの多様性、冗長性
- L2のSequencerの分散化、Relay等の仕組み |
Development | - Completeness of Protocol
- Ongoing Functional
- Protocol Roadmap
- Risk Management
- Development of Third-Party Protocols
- Development of Core Applications
- Ongoing Development Funding | - Protocolの開発の関連事項が一つのEntity等に集中していないこと、コミュニティやファウンデーション等が主導しているか
- 新規コードの監査の責任やモニタリングの主体はどこか、3rdパーティーの開発者がどれだけ関与しているか |
Governance | - Voting Control
- Protocol Development Control
- Functionality Control
- Significant Influence
- Communications | - 投票できるのはだれか、投票の権限は分散しているか
- codeのimplementationは誰が管理しているか
- 機能制御はどのように管理されているか
- 特定のステークホルダーが主要な意思決定に多大な影響力を持っているか
- 誰がソーシャルメディア等のコミュニケーションを管理しているか |
Value Accrual | - Token Value
- Token Ownership
- Outstanding Tokens
- IP Rights | - トークンの価値の発生源はなにか
- トークンホルダーの集中度
- 市場に流通しているトークン数の割合
- IPなどの権利保有者は誰か |
Usage, Participation, and Accessibility | - Liquidity
- Protocol Adoption and Participation | - 市場における流動性
- プロトコル参加者の多様性 |
注 出典から抜粋
出典 a16z & LATHAM&WATKINS, Decentralization Factors for Tokenized Consensus Protocols (Layer 1s and Layer 2s)
まとめ
さまざまな切り口、レイヤーの「分散化」があることがわかりました。
技術、経済、政治という大きなカテゴリから、ノードのクライアント、新機能のデプロイの方法などの細かい点までのそれぞれのレベルで分散化は存在します。
また、a16zの表でみたように、分散化(Decentralization) vs 中央集権化(Centralization)という単純な二項対立ではなく、分散化にもグラデーションがあります。
分散化はなぜ重要か
分散化の定義を整理しました。次に、分散化はなぜ重要なのかを考えたいと思います。
この議論も長い間、多くの人々によって議論されてきました。いくつかの例を紹介し、なぜ重要なのかを考えるきっかけを提供できればと思います。
Vitalikの分散化の理由
Vitalik Buterinは、先ほど同じ2017年2月6日のブログ「The Meaning of Decentralization」で分散化の理由を下記のように述べています。
障害耐性(Fault tolerance) - 分散型システムは、多くの個別のコンポーネントに依存しているため、偶発的に故障する可能性が低い。 攻撃耐性(Attack resistance) - 分散型システムは、周囲のシステムの経済規模よりもはるかに低いコストで攻撃できるセンシティブ・セントラル・ポイントがないため、攻撃や破壊、操作にコストがかかる。 共謀耐性(collusion resistance) - 分散型システムの参加者が、他の参加者を犠牲にして自分たちの利益になるような方法で結託して行動することは、はるかに難しい。一方、企業や政府の指導者たちは、自分たちの利益にはなるが、協調性の低い市民、顧客、従業員、一般大衆には常に害を与えるような方法で結託している。
障害耐性
細かい実装やオペレーションレベルでの分散化の重要性を説いています。例えば障害耐性について、下記のような例をあげています。
- ブロックチェーンの全ノードが同じクライアント・ソフトウェアを実行し、このクライアント・ソフトウェアにバグがあることが判明する。
- ブロックチェーンの全ノードが同じクライアントソフトウェアを実行し、このソフトウェアの開発チームが社会的に堕落していることが判明する。
- プロトコルのアップグレードを提案する研究チームが社会的に腐敗していることが判明する。
- プルーフ・オブ・ワークのブロックチェーンでは、マイナーの70%が同じ国にいて、その国の政府が国家安全保障のためにすべてのマイニングファームを押収することを決定する。
- マイニングハードウェアの大半は同じ会社によって製造され、この会社は賄賂を受け取ったり、強要されたりして、このハードウェアを自由にシャットダウンできるようにするバックドアを実装する。
- プルーフ・オブ・ステーク・ブロックチェーンでは、70%のコインが1つの取引所で保有されている。
障害耐性の分散化を多面的にみると、サーバーの分散化だけでなく、クライアント・ソフトウェア、開発チーム、地域、ハードウェア、トークンホルダーなどの点でもリスクを抑える方法が必要なことがわかります。
攻撃耐性
Vitalikは攻撃耐性の詳細について、下記のように述べています。
- プルーフ・オブ・ステークはプルーフ・オブ・ワークより優れた仕組み。ハードウェアよりトークンの方が規制、攻撃されにくい
- ハードウェアは不要なので、地理的な分散を含め、開発チームを広く分散させることが可能
- コンセンサスプロトコルの設計の際に、経済モデルとフォールト・トレランスモデルの両方を考慮する必要があること
共謀耐性
共謀耐性の「共謀」を定義しましょう。定義が難しいのですが、共謀はなんらかのコミュニティやエコシステムの利益とならない協調行動です。共謀耐性をもつ、悪い協調行動をふせぐために3つのポイントがあるとVitalikは述べています。
- 望ましくない協調をわざわざ緩和する必要はない。その代わり、それに対抗できるプロトコルを構築するように努める。
- プロトコルを進化させ前進させるのに十分な協調を許しながら、攻撃を可能にするほどではない、幸せな中庸を見つけよう。
- 有益な協調と有害な協調を区別し、前者を容易に、後者を困難にする。
3点目は社会的な課題であるとし、その解決策として下記をあげている。この望ましくない協調行動の回避が一番困難ではないかとも述べています。下記の対策を掲げています。
- 社会的介入:ブロックチェーン全体のコミュニティに対する参加者の忠誠心を高め、参加者同士が結託するのを社会的介入して阻止する。
- 異なる役割同士のコミュニケーションの促進:バリデータ、開発者、マイナーのいずれかが、自分たちの利益を他のクラスから守るために協調しなければならない「クラス」として自分たちを見なし始める可能性を減らすために、異なる役割・参加者同士のコミュニケーションを促進する。
- 癒着の阻止:バリデータ/マイナーが1対1の「特別な関係」となったり、中央集権的なRelayネットワーク、その他のこれと類似したプロトコルのメカニズムに関与しようとする動機を減らすようにプロトコルを設計する。
- 明確な規範:プロトコルが持つべき基本的な性質とは何か、どのようなことをしてはいけないか、少なくとも非常に極端な状況下でのみ行われるべきかについて、明確な規範を示すこと。
a16zの考える分散化の重要性
a16zは、2023年5月31日のブログ「Factors of decentralization of web3 protocols: Tools for planning greater decentralization」の分散化の重要性について紹介していきます。
競争の促進、自由の保護、ステークホルダーへの報酬という3つの重要なシフトとはなんでしょうか。一つ一つ詳しくみていきましょう
競争の促進
ブログでは、分散化は、Credibly NeutralityとComposablityを可能にし、それが競争を促進していくようになると述べています。
これはどういうことかというと、Web2では中央集権的なプラットフォーム(Twitter, Facebook, Google, Amazon, Youtube等)が強い権限を持ち、APIを提供したり、データーを独占したり、突然方針を変更したりしていました。しかし、Web3では、分散化によりCredibly NeutralityとComposabilityが確立されました。この2つの概念はとても重要なので、下記でその意味を説明します。
Credibly Neutralityは、「Web3プロトコルは個人、集団のいかなるステークホルダーも差別できない」です。この点が開発者がサービスを構築するインセンティブを高める上で重要です。
Composabilityは、「レゴブロックのようにソフトウェアのコンポーネントを組み合わせる」ことです。
この2つが確立された結果、Web3のプロトコルは公共のインフラのように機能し、誰もが自由にアプリやサービスを構築できるようになります。
出典: Factors of decentralization of web3 protocols: Tools for planning greater decentralization
例えば、最近ではWeb3 Socialと呼ばれるLensやFarcasterのようなプロトコルが登場してきています。これはWeb2におけるTwitterと比較するとわかりやすいです。
Web3 SocialのProは、ソーシャルメディアのために設計された基礎となるアーキテクチャーを提供し、企業や組織ではなく、トークンホルダーによってコントロールされます。誰もがこのプロトコルの上に独自のアプリケーションやクライアントを構築し、ユーザーにアクセスすることが可能です。
Web2では、強くなりすぎた中央集権的なプラットフォームの存在によって、競争が阻害されていました。Web3でこの状況が変化し、競争が促進されるとa16zのブログは述べています。(筆者も競争環境を考えるときの一番の変化は、この点だと考えています。Web3では競争優位を構築しにくくなっています。)
自由の保護
Web3プロトコルでは、トークンを用いて、エコシステムに幅広いユーザーに参加してもらうことが重要です。一握りの個人や企業に権力の集中を防ぐことが目的です。
ステークホルダーへの報酬
これまで資本主義では特定のステークホルダー(株主)を優先してきました。しかし、分散化によってすべてのステークホルダーに対して、利益を公平に分配することが可能になります。
例えば、Twitter(現X)でどんなに投稿してもユーザーは報われないし(最近は少し変わってきたようですが。)、Facebookで初期から友人と交流したり、友人を誘ったりして成長に貢献したとしても報酬をもらうことはできませんでした。
しかし、Web3プロトコルでは、トークンを用いて、エコシステムの貢献者に報酬を提供するように設計することも可能です。また、各プロトコルによって自由に報酬を設計できるため、取り組む事業や目的、哲学によってその在り方は異なるでしょう。
まとめ
私は、個のエンパワーメント、個人の自由を推進していく上で分散化は必須の要素だと考えています。これまでの整理を踏まえて、なぜ分散化の重要性のメカニズムを下記で紐解いてみます。
- 分散化を保つことで、Web3の重要な原則(下記)を確立する
- Credible Neutrality:個人、グループを差別・優遇せず、Permissionlessに誰もがプロトコルを使うことができる
- Composability:レゴブロックのようにソフトウェアのコンポーネントを組み合わせる
- Trustless:第三者を信頼することなく、経済的なメカニズムとインセンティブで運営できる
- Web3の重要な原則により、競争の促進、自由の保護、ステークホルダーの報酬などが可能になる
- 上記の原則を確立することで、a16zの記事にあるように、競争の促進、自由の保護、ステークホルダーの報酬などのパラダイムシフトが起こります。
- これらの特徴を活用した、これまでとは異なるサービスやエコシステムを構築することが可能となります。
最近、Web3、ブロックチェーンと名乗っているが、中央集権の度合いが強いものは上記にあげたような特性を得ることができません。結果として、従来のサービスとの違いを出すことができず、良いサービスを構築することが難しい可能性が高いです。
分散化はどの程度必要なのか
分散化の定義、重要性を整理してきました。分散化にはグラデーションがあると述べましたが、この項では「分散化はどの程度必要なのか」について考えてみたいと思います。
Nakamoto Coefficient(ナカモト係数)
Balaji SrinavasanとLeland Leeによって最初に提案され、ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトに敬意を表して名付けられたナカモト係数は、ブロックチェーンをシャットダウンするために集団で行動できる独立したエンティティの最小数を示す尺度です。
典型的なProof-of-Stakeのネットワークでは、ナカモト係数は、ネットワーク上の全ステークの3分の1(33.33%)以上を支配するノードオペレータの数によって定義されます。(ちなみにPoWで51%。)
簡単に言えば、ネットワークのナカモト係数が高ければ高いほど、ネットワークはこの種の攻撃に強くなります。そして、ネットワークがこの種の攻撃に強ければ強いほど、ネットワークはより分散化され、検閲に強くなるのです。
Ethereumのナカモト係数は2
Ethereumのナカモト係数は2です。これが何を意味するかというと、2つの組織が結託することでEthereumをシャットダウンすることができるということです。
Ethereumのアクティブ・バリデーター数はbeaconscan.comによると86万です。多くのバリデーターがネットワークに参加しています。この数値から、十分に分散できているように見えますが、ナカモト係数が低いのはなぜでしょうか。
Ethereumのバリデーターの分布を見ると、Liquid Staking Protocol(以下、LSD)最大のLidoが約31%。もう1社加わり33%を超えると、ネットワークをシャットダウンできる水準です。
それはLSD(ステーキングプールともいう)の存在が原因です。LSDは、Ethereumのステーキングには最低32ETHを保有してない人でも、ステーキングをして利回りを得ることができるプロトコルです。ステーキングした代わりにstETHを得ることができ、それをDefiなどの他のサービスで利用できます。このLSDで最大のLIDOのシェアが大きく結果的に分散化度合いが弱まっています。
さまざまな分散化の切り口
地域、コンセンサス、実行クライアント、データーセンター以外のバリデーター、ステーキングプールなどさまざまな切り口での分散化の度合いを測ることができます。これらの値をしっかりとモニタリングしていくことが重要です。なぜなら、一つでも中央集権化が進むことでネットワーク全体の分散化が弱まり、検閲耐性や攻撃耐性が弱まってしまうからです。
下記の画像はEthereumの分散化度合いを評価したサイトです。Staking Pool/Entityの多様性が赤信号であるのに加えて、バリデーターの地域の多様性にも課題があるようです。(例 バリデーターの地域分布は米国30-40%、ドイツ10-20%)
出典: ethsunshine.com
イーサリアムのブロック構築のインフラの中央集権化
出典: MEV Supply Chain
トランザクションがブロックに取り込まれるまでのバリューチェーンには、さまざまなアクターが存在しています。(上図参照)各アクターで中央集権化が進み、問題となっています。
MEV Boostの中央集権化
出典: mevboost.pics
Flashbotsが提供するMEV Boostというソフトウェアは90%のシェアを誇っています。
MEV Boostは、Ethereumのプロトコルレベルで実装予定のPBS(Proposers Builders をオフチェーンでいち早く実装したものとなります。(PBSの詳細はこちら)
Block Builderの中央集権化
Block Builderも6社で90%近いシェアを占めています。
Block Builderが少数のプレイヤーに寡占されることで、特定のブロックを入れたり、除外したり、OFAC規制に従うなどの影響が出てくることが懸念されています。
Relayの中央集権化
出典: mevboost.pics
Relayは4社で90%のシェアを占めています。
RelayはEtehreumのネットワークが稼働していく上で重要な役割を果たしているにも関わらず、現状、利益を上げる手段がなく、各社赤字を垂れ流しながら運営を続けています。
Relayの運営社数が少ないこと、地域的な分散が図れていないことなどにより、障害耐性や検閲耐性などが弱まっています。
Validator、Block builderなどの収益を分配することなどの議論がある程度の期間行われていますが、まだ結論が出ていません。
実際、つい先日、Relayの運営をしていたBlocknativeは、選択と集中のため、Relayの運営を停止しました。経緯はこちらに詳しいです。
まとめ
「分散化はどの程度必要なのか」については各プロジェクト、各個人の考え、立場や事業ステージによるところもあるので、一概には言えません。
L1、L2などのブロックチェーンのプロトコルか、スマートコントラクトレベルの分散型アプリケーションかでも観点が異なります。さまざまな切り口、レイヤー、バリューチェーンの各機能など、あらゆる点で高い分散化を保つのはとても難しく、コストもかかります。
Web3プロトコルの事業領域、資本力、事業ステージなどの変数を考慮しながら、分散化に少しつづ向かっていくことが肝心です
分散化とどう向き合うべきか
この記事を通じて、分散化の定義とその重要性について深く掘り下げてきました。多くの開発者、起業家、投資家、そして企業リーダーの方々が、「具体的に何をすれば良いのか?」という疑問を抱えていることでしょう。
Crypto / Web3の本質は「分散化」にあります。プロジェクトや事業を進める際には、この分散化の原理を保持することが不可欠だと考えています。なぜなら、分散化を実現しない限り、Crypto / Web3の革新的な特性やパラダイムシフトを体験することはできないからです。
この記事で触れたように分散化で得られる特性は障害耐性、攻撃耐性、共謀耐性、パラダイムシフトは競争の促進、自由の保護、ステークホルダーへの報酬です。中央集権的なアプローチを取るのであれば、多くの場合、既存のデータベースを利用するだけで充分というケースも少なくありません。
これまでも、分散化を犠牲にして、スピードやコストの安さを優先したプロジェクトが多く登場してきました。また、2021年の盛り上がりの中では、「Web2.5」という概念も登場していました。しかし、Web2.5や分散化を犠牲にしたプロジェクトで、社会に大きなインパクトを与え、成功したプロジェクトは皆無です。
さらに、Ethereumの課題であるスケーラビリティやガス代の高さを解決すると称するEthereumキラーのブロックチェーンも多く登場しています。それでも、Ethereumは今なおBitcoinに次いで二番目の時価総額を誇り、革新的なプロジェクトの大半がEthereumのエコシステムから生まれ、ブロックチェーンのエコシステムにおいて最大の流動性を提供しています。
当然ながら、取り組む領域によって、分散化にどのように向き合うかは様々な形があります。今後、多くの事例が登場することを期待し、私たちもその貢献を果たしていきたいと期待しています。
Tanéの取り組んでいる事業領域(投資、バリデーター、DAOガバナンス)に興味のある方、Web3のプロジェクト、企業の方はぜひこちらからご連絡ください。
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