六人部(むとべ)です。
TanéというCrypto/Web3特化のインキュベータを立ち上げました。ドバイ、NYC、東京の3拠点で活動しています。同時に、DEEPCORE、X Tech Ventures、DeNA、B Dash Venturesや個人投資家から約10億円の資金調達も実施しました。
この記事では、Crypto/Web3時代は実務的な「貢献」が資本となること、新しいVCの形とは何か、分散化による個のエンパワーメントの重要性について、お伝えします。
私の自己紹介を簡単にすると、過去13年間は、消費者向けインターネット分野での3社の経営に関わり(2社を自身で創業)、その前はSoftBankや投資銀行で資金調達やM&Aに取り組んでいました。
Cryptoについては、2014年頃に友人に進められてBitcoinを知り、投資をしたり、事業アイディアを模索したりしていました。その後、Ethereumの登場、ICOバブル、Defi、NFTと一通り経験してきました。今回縁があって、Crypto/Web3に関わる新しい事業を立ち上げることになりました。
「貢献」が資本になる
Discordで知り合った米国のエンジニアから、最近は報酬はトークンでもらっている、という話を聞きました。
彼は多くの種類のトークンを保有しています。しかし、それは彼が出資したり、購入したものではなく、開発の対価としてもらったトークン。これを聞いた時、投資家のポートフォリオみたいだと思いました。
この話がTanéを始めることになったきっかけでした。彼はお金ではなく、自分のスキルを資本として提供して、トークンのポートフォリオを構築していたんです。
長い間、金融緩和が続いたこともあり、お金の価値は低下し続けています。米国ではa16zをはじめとした著名なベンチャーキャピタルファーム(VC)が、投資以外の機能も提供しようと10年以上前から、採用、事業開発、技術などのサービス機能を強化していました。日本でも大手のVCではそういった機能を抱えるところが増えてきています。
Crypto/Web3では、トークンが登場したことでこの流れが加速します。
従来の株式、SOより柔軟に報酬を設計することが可能になってきています。
実際に、貢献度に応じた対価としてトークンを渡すことがWeb3では通例として行われています。
ステークホルダー全員にトークンを割り当てるため、各ステークホルダーがどのような貢献をするのかを明確にすることが求められる傾向にあります。
そのため、投資家についても金銭を出資するだけでなく、「具体的な価値貢献」を求められるようになってきたのだと思います。
このような変化を目の当たりにしていたので、Tanéでは起業家やプロダクト開発をやってきたメンバーを集めました。
Crypto-nativeなBuilderが中心
注: builderとは、事業やプロダクトを作る人々のことを指します。
Tanéは日本語の’種’に由来しています。
私達がSeed(種)での経験が多く、Tanéにおいてもシード・アーリーステージのスタートアップやプロジェクトへの出資、事業支援にコミットしていきたいので、この名前にしました。
Tanéは、Crypto/Web3における新しい投資家の形として、金銭による出資だけでなく、エンジニアリング、事業開発、デザイン、資金調達などの具体的な「貢献」をしていきたいと考えています。
具体例を一部紹介させてもらうと、私達が投資しているThe Culture DAO
Disney, OculusなどのクリエイターやGenerative AIの開発者が集まり、DAO形式でGenerative AIの技術の開発、その技術を用いたコンテンツ作成に挑戦しているプロジェクトです。
クリエイターが多いため、Treasury Managementを私がプランを考え、アドバイスしたり、日本の事業開発についても連携し取り組んでいました。
その縁もあり、出資を行い、より深くコミットするようになりました。
TanéのメンバーのDongriがNFTの設計、スマートコントラクトの開発を担当した。
Dongriは、LINE、Fintech系の企業で豊富な開発経験があり、過去には著名なNFTのマーケットプレイスも自分で開発している非常に頼りになる存在です。
他のメンバーは、DeNA、Twitter、SmatNews等で開発、プロダクトマネージャーとして活躍してきた大石、クックパッド、KibelaをはじめとしてUX、フロントエンドで実績のある出口が参加しています。
チームで簡単なプロトタイプを作れる体制を整え、投資先、支援先に対して力強くサポートしていきたいと思っています。
活動を開始して間もないですが、7件のプロジェクトに投資実行を行い、3件のプロジェクトに事業支援を行っています。
分散化による個のエンパワーメント
私は、中学生のときにNapsterを始めとするp2pのサービスに夢中になりました。これがきっかけでインターネットに興味を持ち始め、その後、仕事としても関わるようになりました。
インターネットが登場してから20年以上の時間が経ち、個人が自分の考えやコンテンツを世界中の人に共有したり、コミュニケーションをとることができます。またタクシーをスマホで呼んだり、人の家に泊まったり、食事も家にいれば届きます。
私はブロックチェーンの技術をベースにした分散化の仕組みによって、中央集権的な仕組みへの依存が減っていくと思っています。
なぜなら、分散化、パーミッションレスとの相性が良い領域(金融、コンテンツ周辺等々)はより良い方へ遅かれ早かれ、引っ張られていくはずだからです。
出典:ethereum.org
私達は、EthereumのWeb3の説明にある「Web3は分散化されている」「Web3はパーミッションレス(誰でもアクセスできる)」「Web3にはネイティブの支払い手段がある」「Web3はトラストレス(第三者に依存しない)」というのはとても重要な概念だと思っています。
私達は、「分散化、パーミッションレスやトークンによって、より良くなる領域」こそ、意味があるのではないかと考えています。
例えば、分散化で5Gの通信ネットワークを構築した方が、大手通信会社より低コストで構築することにチャレンジしてるHelium、Pollen Mobile。(Proof Of Physical Workと呼ばれる領域でTanéでも注目しています。)
また、それまでユーザーがアクションしなかったことでも、トークンインセンティブをうまく組み込むことで課題解決にアクションを促すようなプロダクトを作ることができるかもしれません。
暗号通貨やウォレットは多くの人にとって難しいという声も多く聞こえてきます。これは時間の問題です。いずれは解決されます。
Account Abstractionのように秘密鍵管理の負担をへらす仕組みや携帯電話そのものをハードウェアウォレットにするSolana Mobileの開発が進んでいます。
多くの人が意識的かどうかに関わらず、こういった技術の進化、UXの改善により、自分のデータや資産を自分で管理するように分散化による方法を受け入れるようになっていくでしょう。
種(Tané)を創る
Web3はまだ始まったばかりです。
これからそのエコシステムの土壌となる「種(Tané)」を創り、起業家と一緒に素晴らしい事業を創ることをサポートしていきます。
Tanéの活動を初めて数ヶ月で、世界の多くの起業家、builderと会うことができました。
私はテーブルの向こう側の起業家という帽子をかぶっていました。
逆側にきて気づいたのは、社会的に意義のある新しいことを作り出そうとしている人々に出会うことはそれ自体が素晴らしいことだと実感しました。
私は、Tanéという挑戦を素晴らしい仲間と一緒に行うことができて、とても嬉しいです。自分たちのすべきことを行い、起業家と一緒に挑戦し、投資家に多くのリターンを返し、楽しくやっていきます。
出資や事業支援はもちろん、時にはゼロから一緒に事業を立ち上げていくことも可能です。
Tanéのコンセプトや私達がやっていることが少しでも気になったら、連絡ください。一緒に未来を創っていきましょう。
免責事項:この投稿は一般的な情報提供のみを目的としています。投資アドバイスや売買の推奨・勧誘を目的としたものではなく、投資判断の是非を評価するために使用されるべきものではありません。また、会計、法律、税務上のアドバイスや投資の推奨に依拠するものではありません。本投稿は執筆者の現在の意見を反映したものであり、Tanéやその関連会社を代表して行われたものではなく、必ずしもTanéやその関連会社、Tanéに関連する個人の意見を反映したものではありません。ここに反映された意見は、変更される場合があります。